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主に広島県で蝶の撮影をしています

25年前の宿題

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1987/08/01 広島県にて撮影  

 忘れがたいワンカット。屈辱の一枚。
 
(写真はクリックで拡大されます。大画面でおもいっきりブラウザーを広げていなければ、もう一回クリックで更に拡大されます。ノイズ、ピント、ブレなどの諸問題も拡大されますが、雰囲気などは分かりやすいです。)



 
 25年前の夏のある日。
意気揚々と帰宅した。
後日、現像があがってきて、意気消沈した一本のうちのワンカット。
リバーサルフィルムを、スキャンしている。

 尾端をよーく見ていただけると判ると思うが、小さな水滴が付着している。これが、唯一、水滴が写っている一枚であった。
そう、ポンピングを狙ったのである。水滴が排出される、その一瞬を狙ったのである。36枚撮りフィルムを一本以上使って、一枚も撮れていなかった。現像が出来あがってくるまで、撮れていないなどとは全く夢想だにしていなかった。
 ちゃんと水滴がついているではないか、と思われる方もいらっしゃるだろうが、これはポンピングの瞬間ではない。本種のポンピングを見慣れた方であればお判りいただけると思う。これは切れが悪かったので、水分が少し、尾端に残ってしまったのである。時々、こういうこともある。この写真は、水滴が尾端から出た瞬間の写真ではないのである。水滴がついているけれども。

 というわけで、8日後に、もう一度トライした。そのうちの二枚が下の写真。
本種は集団吸水する事で知られている。集団吸水していると、どの個体にピント合わせようか、迷ってしまうのである。最近は、迷うような贅沢をしたことはないのが残念である。 
で、水滴の写真であるが、やはり撃沈したのであった。 
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1987/08/09 広島県にて撮影

 やはり水滴は撮れていなかった。今この写真を見直してみると、三枚目なんかは、おそらく尾端から水滴が離れた直後なのではないか、とも思うのである。
残念賞であるが、これが私の当時の限界であった。
カメラの限界、そして、撮影対象を選ぶ私の経験不足を露呈した三枚目の写真である。
集団吸水しているのに、なんでわざわざこの個体を選んだ?(撮影対象の選び方、間違ってないか?)

 この年の夏、はじめて、タイムラグ、という言葉を意識したのであった。
 ライムラグを克服してギンイチモンジセセリの尾端についた水滴を撮るべし。
 夏の高原から頂いた宿題。

 その後、四半世紀、カメラ(そしてレンズ)の進化は素晴らしい。
オートフォーカス、測光の信頼性、連写速度、高感度耐性の向上、などなど。
蝶の撮影は格段に簡単になったと思う。
ただ、あまり議論に上がることは無いが、タイムラグの長短も、蝶撮影には大きな要素となる。
そして、このタイムラグに関しては、劇的な進化はないように思う。
コンデジよりも、写るんです、の方がタイムラグは短いのではないか?
はい、チーズ。と言ってシャッターボタンを押したのに、ストロボが光ってカシャッ、と音がするまでの、あの間の抜けた零点数秒。あれはどうにかならないのか?
そもそも、カメラ店でもらったカタログにも、ホームページで各社のカメラの諸元表を見つけても、タイムラグが記述されていることは少ない(ほとんど無い?)。各メーカーは、画素数が増えました、とは宣伝するが、タイムラグが少なくなりました、とは宣伝しない。稀に、最高級機種では述べられるようではあるが。
 蝶の撮影にあたって、カメラに最も要求されるものは何かというと、レスポンスではないかと私は思っている。
画素数や連写速度の向上、画像処理エンジンの改良は、おまけである。撮影者の意図を、瞬時にくみ取ってくれるカメラでなければ、軽快な撮影はできない。今まで何台かのカメラを使ってみて、そう思う。3600万画素など必要無いのである(有るにこしたことはない)。秒12コマも要らないのである(有るにこしたことはない)。イメージセンサの大小はどうでもいいのである(大きければ良いというわけではない)。1秒後には飛び立つかもしれない蝶をとる、1秒後には光の角度が変わるかもしれない、一瞬の翅の煌めきを撮りたい、こういう時に咄嗟に操れるカメラこそが最高だと思う。秒10コマ連写するより、たった一枚で確実に決めたいのである。どんなに画素数が多くても、画像処理エンジンが優れていても、ピントが合っていなければ意味は無い。ぶれていては意味は無い。その瞬間が撮れていなければ意味は無い。そもそも、撮れていなければ、問題にさえならないのである。
 撮影者の意図を的確に素早く体現できるカメラ。それが最高である。
とっさの変化に対応できるレスポンス。操作ボタンの配置、大きさ、重さ、手に持ったときの馴染みとか、オートフォーカスやシャッターの感覚。マニュアルフォーカスのしやすさ。一瞬の露出補正。ファインダーの見え方。さらにはシャッター音も大切である。タイムラグの少なさは重要な要素となる。ミリセカンドの単位のタイムラグを、はたして感じることができるのかどうか?飛翔写真を撮ったことがあれば、実感として解るはずである。0.01秒の違いは大きい。また、今まで提示した三枚の写真と、以下に提示する三枚の写真の差が、その答えである。
 いろいろ調べてみると、D4,D800は0.042秒、D7100は0.052秒。EOS-1D X は0.055秒、EOS-5D MarkⅢは0.059秒。EOS Kiss X7i が0.075秒とある。オリンパスには期待しているのであるが、E-5が約0.06秒。ミラーレスのOM-D,E-M5が0.05秒とのこと。ミラーが小さい、ミラーがない、という恵まれた条件の中でこれでは、2強に負けているのではないか?銀塩ではニコンF3が約0.04秒、F6が約0.037秒。キャノンNewF1が約0.04秒。ただし、各社、試験法が必ずしも同じではなく、例えば、キャノン機は、絞り値によって、バラツキが出るとの噂もあり。キャノンではペリクルミラーを採用したEOS RTでは0.008秒と、素晴らしい数値をもっている。RT、すなわちリアルタイム、という名を持ったこのカメラの存在、これすなわち、他のカメラでは、リアルタイム、その瞬間は撮れない、とカメラメーカーが言っているようなものとも受けとれるのだが。
私は、このEOS RTを購入したのである。月賦で。当時、金銭的な余裕はさほど無かったが、養うべき家族やそれに付随するしがらみもなかったので、購入できたのである。キャノンのカメラを使ってみたい、といった動機がもちろんあったのであるが、最大の理由は、冒頭の写真である。この写真は、高くついたのである。
しかるに、RTで雪辱を期せたかというと、そうもいかなかったのである。なぜなら、この年以降しばらくは、ギンイチモンジセセリのポンピング場面に遭遇しなかったからである。これ以降は、この時期、この場所へ行かなかった事が大きい。今そこへ行って、本種に遭遇するかどうかも、疑問である。悲しいことに。
EOS RTの使用感はというと、これはあまり良くなかった。レンズからの光をミラーを動かさずに分光するのでファインダーが暗くなり、ざらつき感があった。結果、ピント合わせが難しくなる。フィルムに届く光量が落ちる。この二つの理由により、マクロ撮影では軽快な撮影とはいかなかった。というわけで、RTでは、ギンイチモンジセセリに対峙する機会が無かったのである。

 タイムラグには二つあって、一つはカメラのメカニカルな部分に依存するもの。レリーズタイムラグ。シャッターが押し込まれた後、ミラーが跳ね上がり、露光面に光が到達するまでの時間差である。前述した、れーてんれい何秒、という数値がこれである。EOS RTでは、このミラーが跳ね上がる動作がないので、その分タイムラグが短くなる。OM-Dが、なんであんなにとろいのか、解らない。タイムラグ、連写、という分野では、ミラーレス機に期待しているのであるが、どうなんでしょうか。今秋には、OM-D、もしくはE-5の後継機が出るとの噂がある。タイムラグが圧倒的に少なくなっていれば、是非とも欲しいのであるが。
タイムラグのもう一つは、機械以前の撮影者の問題。あ、水が出てきそう(出てきた)、シャッターを押そう、と思ってから、実際に指が動いてシャッターを押すまでの時間差である。ヒューマンタイムラグ。
この二つが合わさって、撮影のタイムラグとなる。
水滴が排出されたのを確認してからシャッターを押したのでは、遅いのである。露光面に当たった光にはすでに水滴は無い。かつての私のフィルムの如く。
 ということで、タイムラグを完全になくす事ができない以上、ポンピングの撮影においては、それを考慮に入れた撮影が必要である。
できるだけメカニカルタイムラグの少ない機種を使うこと、そして、自分の感覚を研ぎ澄ましてヒューマンタイムラグを減らすこと。予め水滴の出現を予測して、見当でシャッターを切る、というのもテクニックである。適当に連写する、というのもあるが、これは面白くない。写したのではなく、写った、訳であるから。一発、必中を狙うべきである。ポンピングの撮影は、真剣勝負である。
幸いなことに蝶の吸水時には、割と接近が可能で(他の状態に比べれば、の話)、しかもある程度の長時間にわたって吸水(ポンピング)してくれることが多い。よく観察していると、水滴の排出を何となく察知できるようになる。ほぼ同じくらいの周期で排出している事もあるし、排出の直前に尾端が動くことからも、その瞬間を察知できるようになる。何事もよく見ることが大切である。

 というわけで、25年後、その瞬間を察知して撮影したのである。もちろん、カメラも変わっている。
百発百中、とは行かないが、25年前に比べると、遥かに率は向上した。観察眼を持ったこと、いい相棒に恵まれたこと、そして、いい撮影対象に恵まれたこと、による。

 25年後に提出した宿題。やっと撮れた。これで進級の「可」が頂けるでしょうか?

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 宿題の提示から、四半世紀も経っているのであるから、尾端に水滴がついているだけの写真では、面白くない。
次の写真、ダブルドロップである。

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 左の水滴が、今まさに出現した物。右の水滴は、切れが悪くて残ってしまった前回の水滴の一部。
宿題の提出が四半世紀も遅れてしまったので、「良」を頂くには、このくらいの色をつけなければならないであろう。

 最後の写真、蝶から離れて、空中にある水滴。

pump120506-3

 物理的に、本種では、この空中にある水滴の写真は撮影が極めて困難である。
理由は簡単で、尾端から地面まで、ほとんど空間がないからである。
25年前に撮影した写真を見返してみると、モデルの選択を間違っているのが解る。
尾端から水滴が出てから地面に到達するまでの時間が、なさ過ぎるでは無いか。三枚目なんかは、出た次の瞬間、地面に吸収されるのではないか?25年前、そこまで考えていなかった。尾端しか見えていなかったのである。
 集団吸水していると、どの個体にピント合わせようか、迷ってしまうのである。と前述したが、ポンピングを撮りたければ、迷えないのである。尾端から地面までの距離が一番長い個体を選ぶしかない。
最適なモデルは、そうそうはいないのである。

 最後の写真、これはラッキーである。たまたま傾斜した所でポンピングしている。
これを天の恵みという。
尾端から地面までの距離がある。
こういう個体に遭遇したならば、まずは天に感謝し、そしてすぐさま空中水滴撮影モードに切り替える必要がある。

バックを完全に飛ばして、水滴をもっと止めていたならば、「優」が頂けたかも。

 さて、本種は、集団吸水することで知られている。
が、私はここ最近、その場面に遭遇したことがない。単発的な吸水個体にお目にかかるのみである。
 もう一度、本種の集団吸水の場面に遭遇したいものである。どの個体にピントを合わせようか、迷うような場面に、もう一度会いたい。迷っちゃいけない、といったのであるが、迷いたいのである。


いずれの写真も、広島県にて撮影 ギンイチモンジセセリ

追記; 機会があれば、ギンイチモンジセセリよりも、もっとポンピングの写真撮影が難しい種についても述べてみたい。
尾端が翅に隠されて直接見えない種のポンピングなんてのは、究極の難しさがある。どうやったらポンピングを表現できるのか?どうやって水滴を撮るんだヨー?それについても述べてみたい。
いつになるかはわかりませんが。

追記;(2013/05/10)
 オリンパスの新製品発表がありました。E-P5
 高速レリーズタイムラグモードというのを搭載したらしいです。約0.044秒とのこと。まだまだRTとは桁が違いますが、秋の新製品に期待が高まります。












  1. 2013/05/06(月) 23:14:27|
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